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ルポ:ニュージーランドの果樹園労働について(8)

仕事も終わりに近付いた頃、一度、チェーンソーで切り落とした枝が、腕を直撃して大きなあざを作ったことがある。その時僕らは、刈り取って集めた枝を、走っているトラクターに積み込む作業をしていた。その頃になると誰もがどこかに傷を負っていた。コリーでさえ、千切れたワイヤーが鼻の頭を貫通するという怪我をしていた。連日の疲労がたまるのにつれて僕らの口数も少なくなった。のどの渇きで頭がいっぱいになった。水といってはホステルから持って来た分しかない。地面に落ちたキーウィフルーツが思わず目に入る。コリーの目を盗んで食べるキーウィは、生の大根のように固かった。何の味もしなかった。
 

娯楽と呼べるものはほとんどなかったけど、日曜日になれば、僕らは例のセダンで遠出をした。ケリケリはニュージーランド最北端のケープレンガに近かったから、その灯台まで辿り着いてインド洋と太平洋の境目がずっと先まで伸びているのを眺めることができた。視線を下に向けると、アシカが浜辺で寝そべっていた。近くの看板には「東京まで八六三一キロ」と書いてあった。
 

やがて六週間が過ぎ、遂に最後の仕事を終えた時、僕らは何の実感も持てずに、ただぼんやりと、枝一つない果樹園を眺めて乾杯した。車に乗り込む時には、コリーが湿った軍手を脱いで、固い握手をし、「よくやったな」と言ってくれた。マイクは次の仕事までまた残っていくつもりで、三日と経たないうちにホステルにはまた新しい労働者たちがやってきた。この町で、それは一つの季節の終わりを意味していた。
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都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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