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ルポ:ニュージーランドの果樹園労働について(9)

  ケリケリを去る日の朝、僕は初めに訪れたスーパーマーケットのそばから長距離バスに乗った。それは海岸沿いを通ってオークランドへ向かうバスだった。乗りこんで振り返ると、靴に浸み込んでくる水滴やむせるような枝の匂いが、懐かしく湧き上がってきた。自分で作った夕飯のポテト料理の味、できそこないのキーウィを蹴り飛ばす感覚も、同じようにこみ上げてきた。その感覚は今でも思い出す。東京の街を歩いている時でも、何かふとした拍子に。


  僕はケリケリで働いていた。あの町では、働いた分だけがそのまま返ってきた。一時間で一三・五ドル、それはずっと変わらなかった。どれだけ辛くても、それ以上にもそれ以下にもならなかった。大金が欲しければその分働くしかなかった。それは単純で、素朴な生き方だった。


  そうやって、僕は八六三一キロ離れた町のことを思う。人々は相変わらずそこで働いている。彼らは汗を流して食い扶持を稼いでいる。文句を言いながら、キーウィを刈り取っている。僕はいま、それが妙に懐かしい。もう二度と戻ることはないだろう。


終わり
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Author:FC2USER586252FFA
都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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