FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コラム翻訳:アーネスト・ヘミングウェイ『フランス人のズボンの謎』<訳文>

  このコラムでは珍しく、会話文が多用されている。これもヘミングウェイの文学的な修業期間を語る材料になるだろう。ヘミングウェイの描く会話は当時、非常に斬新だったという。その理由ははっきりとはわからないが、おそらく『日はまた昇る』のような、支離滅裂でしかしどこか味わい深い会話のことを言っていると思われる。


  ヘミングウェイは朝起きると三四本鉛筆を削り、その間に気持ちを整えてから執筆に臨んだと言われているが、会話を描くときはタイプライターを用いたそうだ。「その方が会話のリズムをつかめる」というのが理由らしい。短編のなかには会話文だけで進行する物語もある。


『フランス人のズボンの謎』
1922年3月22日 トロント・スター紙  


  パリ。遂に、あのフランス人の労働者たちがはく、裾の狭いバルーン型のズボンについて説明する。人々は何年もの間、どうして彼らがあの大きくうねった、足を引き寄せることもできないような袖口の小さいズボンを身につけたがるのか、ずっと不思議に思ってきた。いまや、その答えが明るみに出るのである。彼らではない。彼らの妻が、あのズボンを買うのだ。
 

  最近フランスの工場で、男たちが真昼時に大規模な衣服の交換を行っている。彼らはコート、ズボン、帽子そして靴を取り換える。これはフェミニズムに対する反抗だ。彼らの妻は大昔から夫の服を買ってきたので、いまや男たちが抵抗を始めたのである。
 

  同じ連帯に所属していて復員以降会っていなかった二人のフランス人が、ある日バスの中で再会し、自分たちの不平を並べ立てていた。


  二人のうちの一人が、「ヘンリー、その髪はなんだ?」と言った。

「ああ、かみさんだよ、あいつが切ったんだ。でもお前だってそうだろ? あんまりキマってるとは言えないぜ」

「おれもかみさんだ。あいつ、床屋はケチで薄汚いって言うんだよ。切り終わると同じ分だけチップを払わせるのにさ」

「まあ、髪の毛なんて大した問題じゃないぜ。それよりこの靴を見てくれよ」

「おい、なんて靴だよ!信じらんないぜ」

「これがかみさんのやり方なんだよ。店に入って言うんだ、「夫に靴を一足買いたいの。高くないやつで。確か、足は私のよりこれぐらい長くて、それにこれぐらい幅があったわ。まあ、それ良さそうね。包んでちょうだい」って。ひどい話だよな!」

「でもおれだって同じだよ。セール品ばっか着せられてさ。サイズなんて問題じゃないんだ。安いからな。それでもあいつは料理が上手いんだよ。比べものになんないぐらいだ。なあ、きっとお前も、彼女の料理が最高だっておれが感謝するのも分かってくれるぜ」

「うちも同じさ。値段なんてつけらんないほど上手いんだ。料理人の中でも最優秀の逸材だよ。結局服なんて何でもないさ」

「本当だな。本当に本当だ! 服なんてちっぽけなことだぜ」
 

  こういうわけで、工場で衣服の交換があったり、あちこちで反乱が勃発したりするにも関わらず、おそらくフェミニズムの統治は続いていくのである。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

FC2USER586252FFA

Author:FC2USER586252FFA
都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。