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ドキュメント:ある少年の物語(3)

(必ずまえがきから読んでください)  


  <二年前・夏>


  カズキは考えていた。ステレオから音楽が流れていた。一日中、毎日、ずっと流れていて、もう新鮮味も何もなくなっていた。カズキはリョウタに何があったのか、と考えていた。昨日も一昨日もその前もその前も、リョウタは来なかった。昼ごはんと下校に。今までずっと一緒にいたのに。何があって、急に来なくなったんだろう。嫌いになったのか? おれのことを? いや、あり得ない。だって、リョウタのことだ。聞いてみよう。おれらなら、話せばそれでわかりあえるはずだ。
  
  カズキは考えながら眠り、また高速道路の夢を見た。それはずっと先まで伸びて、見えなくなっていた。


  校門は二つあった。一つは大通りに面し、もう一つは駐車場に面していた。カズキは駐車場の方で待っていた。いくら待っても、リョウタは現れなかった。教室の外で、リョウタに会うことはもうほとんどなかった。下校する時ぐらい、カズキは二人でいたかった。
  
少し経ち、他の生徒もほとんど出てきたところで、カズキはもう一つの門へ行った。こんなことなら教室で聞けばよかった、と思った。そうしたらすぐ、いまごろは一緒に帰れたのに。二人でゲームでもやって、こっそり酒も飲んで。ゾンビたちとは違っても、でもおれらなりに楽しいじゃないか。
  
  カズキは三十分ぐらい待って、リョウタを見つけた。声を掛けようとした。リョウタは歩いてこっちに来た。カズキは手を上げた。
  
  すると、リョウタの横に女が一人見えた。二人は笑い、手を繋ぎながら歩いていた。女は長い髪を後ろで束ねていた。リョウタは楽しそうだった。
  
  しまった。失敗だ。しまった。カズキは慌ててその場を立ち去った。失敗だ。しまった。頭の中を色んな言葉がぐるぐる回った。しまった。失敗だ。取られた。取られた。
  
  女の笑った顔が頭にこびりついた。鼻が痛くなり、目に涙が浮かんだ。ちくしょう、と思ってから、カズキは我に返った。


  それからずっと、カズキは教室から出ていってツヨシと昼食を食べるようになった。それはカズキにとって、少し不本意だった。ツヨシは、話は合っても、どこか不自然なところがあった。周りの人々はツヨシを不気味な奴だと思っていた。
  
  二人が一緒にいると、ひそひそ声がもっと高まった。こんなんじゃますます嫌われる。ツヨシには悪いけど。だけど本当のことだ。カズキはため息をつきながらそう考えた。それでも、一人よりよっぽど良かった。


  休み時間にリョウタがトイレから出てきて、カズキはちょうど鉢合わせた。リョウタは一人でいた。
「リョウタ」
  
  カズキは震える声で話しかけた。リョウタは何? と答えた。

「今日、一緒に帰れる?」

「今日は、ちょっと無理だよ。今度にしよう」
  
  リョウタは通り過ぎようとした。カズキは引き止めて、またあの女と帰るのか? と聞いた。

「関係ないだろ」

「関係ない?」

「そうだよ、おれの彼女なんだから。カズキだって彼女が出来たらわかるよ。アミとか、お前のこと良いと思ってるらしいしさ」
  
  リョウタは「また今度でいいじゃないか」と付け足して、そのまま歩いていった。カズキはその場に立って、なんだよそれ、とつぶやいた。後ろ姿はすぐに見えなくなった。


  教室で授業を受けている間、カズキはもうリョウタの方を見ようとしなかった。その方が、気が楽だった。退屈にはもう慣れていた。ただその分、カズキの視線はアミのところに向かった。アミは大人しく、目立たなく、教室の隅で授業を聞いていた。
  
  あの横顔はかわいいな、と、カズキは心の中で言った。アミか、話したことはないけど。でもゾンビたちとは違うのはわかる。目立たないけど、その分話しが合うかもしれない。
  
  カズキは、今もし教室に強盗が入ってきても、自分は彼女のことを守るだろう、と思った。それから強盗を殴って、蹴り上げて、武器を奪い取る。それでアミと一緒に走って逃げる。遠くまで。二人きりで。手を繋いで。見えなくなるぐらい、先の方まで。アミならきっと、ついてきてくれるだろう。
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Author:FC2USER586252FFA
都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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