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ドキュメント:ある少年の物語(5)

(必ずまえがきから読んでください。これは小説ではありません)  


  <二年前・秋>


  ツヨシはある絵を見せてくれた。それは戦場の絵だった。たくさんの人が倒れて積み重なる上に、銃を持った男が立っていた。そこに吹き出しがついていた。「おまえがまだ生きているのは、おれがそうさせてるからだ」。
 
  カズキはその絵に妙に惹かれた。誰かの人生を支配することに。生きること、存在すること。カズキはその二つのことをまだ考えていた。
 
  生きることは部屋にいること、死ぬことはそこから出て行くこと。それはわかっていても、カズキはもっと知りたかった。結局、自分は何もわかっていないような気がした。


  学校で、カズキは一人の女の子に話し掛けられた。新しい靴について、その子が声を掛けたからだった。カズキは心が揺さぶられるのを感じた。彼女の声は軽やかで、カズキの耳に心地良く響いた。彼女は屈託なく笑いかけ、髪を指で整えていた。首のあたりに綺麗なほくろがあった。瞳がきらきらと光っていた。
 
  言葉がうまく出てこなかった。カズキは下を向きながらぼそぼそと話した。


  カズキはツヨシと家に帰りながら、ずっとその子のことを考えていた。心が惹かれた。心臓がどきどきと鳴った。でも忘れない、アミのことがある。アミはあれ以来、おれを避けてる。おれが存在しないみたいに。そうだ、おれが存在してないみたいに。石ころみたいに、ごみくずみたいに。あの時だってそうだった。おれが存在していないみたいだった。おれはこんなに必死に生きてるのに。誰よりも真剣に生きてるのに。本気で生きてるのに。それを、アミはごみみたいに扱ったんだ。信じてたのに。おれはごみじゃないし石ころでもない。存在してるんだ。おれはちゃんとここにいるんだ。
 
  あのゾンビたちはみんな恋人がいるのに、どうしてこんな差があるんだ? 見た目がそこまで違うわけじゃない。性格が? 髪型が? 服装が? 運動ができないから? テストができないから? 
 
  おれだって必死に生きてるのに。欲しいものは全部あいつらが手に入れる。いや、手に入れるんじゃない。おれから奪ってく。金だって取っていったじゃないか。取られたんだ。奪われたんだ。力ずくでむしり取られたんだ。おれだけが。世界でおれだけが。この世の中で、おれ一人だけが。どうして? 理由が知りたい。考えてもわからない。どれだけ考えてもわからない。こんなことは。なんでおれだけ? もっとそうなるべき奴らがたくさんいるじゃないか。なんでおれなんだ? あいつら、不公平じゃないか。


  横からツヨシが聞いてきた。ツヨシは「もし銃があったらどうする?」と聞いた。カズキは答えなかった。頭の中で考えていた。ツヨシは気にせず、興奮したようにしゃべっていた。銀行強盗をしてから、学校のムカつく連中を撃ち殺すことを。
 
  カズキは黙って考えていた。ツヨシの言うことは不愉快だった。ツヨシは相変わらずしゃべり続けていた。

  自分の頭だ。カズキは思った。おれなら、自分の頭を吹き飛ばす。
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Author:FC2USER586252FFA
都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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