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ドキュメント:ある少年の物語(8)

(必ずまえがきから読んでください。これは小説ではありません)  


  <一年前・春>


  年が変わった。一年が終わり、また別の一年が始まった。世界は相変わらずだった。カズキは学校に通い、学校は退屈だった。
  
  カズキはそれでもほとんど休むことなく通った。成績は上がらず、教師たちに怒られ、他の生徒からからかわれることもあったが、カズキは気にしなかった。ナナに会えればそれで良かった。ナナを一目見れたら、その日はもう何も考えられなかった。少しでも話すことさえできたら、もうカズキは死んでもいいと思った。
  
  実際、二人は会話をすることがあった。ナナから話しかけた。カズキは顔が赤くなるのを必死で隠した。ナナはその様子を見て微笑んでいた。
  
  愛だ。愛がおれらのもとにあるんだ。カズキは心の中で叫んだ。幸福だ。幸福だ。幸福なんて何の意味もないのに。
  
  カズキは周りを見渡した。クラスの何人かが目を合わせ、顔をしかめた。ひそひそ声が聞こえた。おまえらの愛とは違う。おまえらとは違う。おれらの愛は本物だ。だって、おれは彼女のためなら死ねる。おまえらにその覚悟があるか?


  純粋な存在、という言葉がカズキの頭に浮かんだ。教師がつばを飛ばしてしゃべっていた。時計が音を立てて動いていた。自分はいま、この世界に存在している。純粋に、疑いなく。カズキは、だからこそおれは死ねる、と思った。いまここにいるからこそ、向こう側にも行ける。ナナのためなら尚更だ。


  ツヨシと話していても、カズキはずっとナナのことを考えていた。下校中も、昼食中も変わらなかった。正直に言えば、カズキはツヨシといるところをあまり見られたくなかった。そのせいでナナに嫌われないとも限らなかった。
  
  ちくしょう。ツヨシは呟くように言っていた。最近、ツヨシはいつもこの調子だった。ちくしょう。ちくしょう。クズめ。クズめ。

「おれは死にたいよ」
  
  ツヨシは平坦な声で言った。カズキはツヨシの方を見た。

「死にたいよ。このまま死にたい。わかるだろ?」
  
  カズキはうなずいた。死ぬことは別におれにだってわかってる。

「死にたいんだ。ただ死ぬんじゃなく」
  
  ツヨシは続けて、「殺してから死んでやる」と言った。カズキはどういうことか尋ねた。

「もちろん、教えてやるよ」
  
  ツヨシは自分の計画を話した。それは自殺と人殺しの計画だった。カズキはぼんやりと聞いていた。

「お前も一緒にやろうぜ。おれらならできるさ」
  
  ツヨシは歯をむき出しにし、そのまま自分の計画の詳しい話をし始めた。それは綿密で、詳細な話だった。カズキは黙っていた。


  別れて一人になった時、カズキはツヨシを軽蔑した。ひどく気分が悪かった。不快な話だった。気味が悪かった。でも。カズキは思った。頭がぼんやりしていた。血が上っていた。でも。カズキは思った。そうして、また考え直した。
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Author:FC2USER586252FFA
都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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