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ルポ:ニュージーランドの果樹園労働について(3)

  仕事は毎朝八時、防風林に囲まれた傾斜の急な果樹園で行われる。僕らはいつも、霜が覆っている屋外の冷蔵庫から食材を取り出して、質素な朝食と昼食を作ってから現場まで向かった。使える車は古びた紺色のセダンだった。朝になるとフロントガラスは氷が張った。それが水や熱湯で溶かされるまでは、全員、窮屈な車内で身を寄せ合って体を温めながら発進を待った。ガソリン代は週末になるとそれぞれ個別に請求された。同じ日本人の祐二は六千円近く払わされたこともあった。


  温まった車が向かうのは、ホステルから十分ほど走った所だ。朝日の橙色の光がちょうど牧草地と牛たちを照らすなかを、ニュージーランド名物のラウンダバウト(円形交差点)や小川に架かる橋を越えて進んでいく。早朝の果樹園は空気が透き通り、頭上の雲ひとつない青空はどこまでも続いている。陽光が遮られることはなく、防風林の緑が生き生きと輝く間で、ファンテイルという尾のカラフルな小鳥が辺りを飛び交う。僕が、草についた冷たい露が靴下をぐしょぐしょに濡らすのにも、枝についた木くずが目の中に入り込んでくるのにも、尖ったワイヤーがジーパンにいくつも穴を開けるのにも我慢することができたのは、これらの景色があったからだと思う。落ち葉に埋もれたキーウィフルーツの列は先が見えなくなるまで果てしなく続いていた。ケリケリにある農地は北部だけで実に千エーカー、約四千平方キロメートルにも及ぶという。


  ケリケリは人口約六千人の町だ。北島の突端に位置し、長距離バスの停車駅になっている。この町の歴史は、一八一九年に先住民であるマオリ族がイギリスからやってきた宣教師を迎え入れたことから始まった。その名残は国内最古の現存家屋ケンプハウスなどに見ることができる。町はその後、一九二〇年代を境に変貌を遂げた。そして今では圧倒的な農業生産力を持ち、「北のフルーツ・ボウル」と呼ばれている。ここでの収穫物はキーウィフルーツからレモン、スモモだけでなく、マカダミアナッツや野菜、花などにも及ぶ。


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都内某W稲D大学三年生 
(ジャーナリズム専攻)

好きなもの:ヘミングウェイ
嫌いなもの:なし

略歴:T県の田舎町に生まれる。親は離婚。大学進学で上京。アメリカの新聞社で就労経験。

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